女子サッカー元日本代表で、トランスジェンダーの横山久美さんが、入籍したことがニュースになりました。
横山久美さんはトランスジェンダーで、性別は女性として生まれましたが、自覚として男性として生きることを選びました。
男性として生きるのに、なぜ女子リーグに所属するのでしょうか。
そもそもトランスジェンダーの選手は、どちらの性でスポーツをするのでしょうか?
気になりましたので、調べてみました。一緒にみていきましょう!
そもそもトランスジェンダーとは?
トランスジェンダーとは、「出生時の性別が、自分の思っている性別と異なる人」のことを指します。
出生時に女性として生まれ、自覚は男性という場合は、女性(female)から(to)男性(male)で「FtM」というそうです。逆の場合は、「MtF」になります。
また、より広い言葉として、性的マイノリティ全般を表す「LGBTQ+」があります。
レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と体の性が一致していない方)、自分の性がわからないという「クエスチョニング」、性的少数者を表す「クィア」の略です。
トランスジェンダーのスポーツ選手は、どの性で競技に参加するのか?
東京五輪では初めてトランスジェンダーの選手が出場した
2021年の東京五輪で、女子重量挙げのニュージーランド代表ローレル・ハバードが、オリンピック史上初のトランスジェンダー選手として参加しました。
メダル獲得はならなかったものの、歴史的な好成績を収め、話題になりました。
国際オリンピック委員会(IOC)では、トランスジェンダー選手の参加に関して、ガイドラインを設けています。
FtM選手は、無制限で男性競技への参加できます。
MtF選手が女性競技に参加する場合は、4つの制限があります。
① 性自認が女性であると宣言し、スポーツ参加の目的では最低4年間変更できない
出典:国際オリンピック委員会(IOC)ガイドライン
② テストステロン値が競技参加の最低12カ月前に基準値を下回っていることを証明する
③ 選手の総テストステロン値が、女性として競技する有資格期間中を通して基準値以下に保たれる
④ ①~③は検査によって監視される場合があり、違反した場合は女子競技への参加は12カ月間停止される
つまり、
- 女性として生まれ男性として生きる「FtM」選手は無制限に男性競技に参加できる。
- 男性として生まれ女性として生きる「MtF」選手、テストステロンの値が基準値以下でないといけない。
ということです。
ローレル・ハバード選手は、男性として生まれ女性として生きる「FtM」の選手で、テストステロンなどの基準もちゃんとクリアしていました。
けれども、
もともと男性なので不公平ではないか
という意見もあり、議論を呼んだようです。
けれども、ローレル・ハバード選手は勇気のある行動をしたと思いますし、今後のスポーツ界のトランスジェンダー選手に対する理解を進める行動にもつながったことと思います。
a
公平性を保つのは難しい?
イギリスのスポーツ評議会では、公平性を保つのは難しい、との発表をしました。
公平性より、トランスジェンダーを含めて多くの人にスポーツは開かれるべき、という意見を発表しています。
英国のスポーツ評議会平等グループ(SCEG)は30日、トランスジェンダー選手の包括が、公平性や安全性と「一つの競技モデルの中で共存することは不可能」であるとする新たな検証報告を発表した。
報告書ではまた、「性別が影響する競技においては、テストステロン値を抑制することが、トランスジェンダーの女子選手と生来の女子選手の公平性を担保する可能性は低い」とされ、「平均的な女性と、平均的なトランスジェンダーの女性もしくは出生時は男性だったノンバイナリーの人とを比較した場合、筋力やスタミナ、体格の面で差は残っている」と指摘された。
SCEGは今回の提言が、スポーツに参加する全ての人々にとって「閉鎖的ではなく開放的」な機会になることを願っていると述べた。
出典:https://www.afpbb.com/articles/-/3368840
スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)によれば、トランスジェンダー女性のテストステロン値を抑制しても、筋力を減らす効果は限定的だとされています。
理解のあるはずの海外でも議論の真っ只中
2020年10月には、ワールドラグビー(World Rugby)が、トランスジェンダーの女子選手がエリートおよび国際レベルの女子大会へ出場することについて、「安全性の観点」から認めない、と決定しました。そのような判断を下した初めての国際スポーツ連盟となっています。
2021年6月1日には、米フロリダで、キリスト教系の公立校で、トランスジェンダーの女性が、女子の運動部に参加することを禁止する法律が成立し、議論を呼んでいます。
ジョー・バイデン米大統領は就任初日に「性自認や性的指向に関係なく、すべての人が法の下で平等な扱いを受けるべきだ」として性差別禁止に関する大統領令に署名していますし、トランスジェンダー女性が競技に参加することは人権で保障されているはずです。
理解の進んでいるアメリカなどでも、まだ議論は収まらないようです。
周囲の反応は?
彼女が所属するアメリカ女子サッカーリーグNWSL(ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ)でトランスジェンダーの参加基準がきっちり決められていました。
FtMの選手は、基本的に参加可能です。男性になるためにテストステロンを使用している場合は、検査で基準値以下なら許容するとされています。
横山久美さんは、ちゃんと基準を満たしているから女子リーグに継続して参加できているのでしょう。
https://prod-nwsl-cdn.s3.amazonaws.com/wp/uploads/2021/03/2021-NWSL-Policy-on-Transgender-Athletes.pdf
横山久美さんは周囲の理解にも恵まれて過ごすことができているようです。
横山久美さんとなみさんの結婚について、サッカースタジアムでプロポーズした際に流した動画がありました。この動画は横山久美さんのサッカーチームメイトが作ってくれたと言います。
同じチームのワシントン・スピリットに、クイン選手(Quinn)選手がいますが、この方も以前からトランスジェンダーを公表しています。
さいごに
トランスジェンダーの横山久美さんが、なぜ女子リーグに参加しているか、について調べてみました。
なかなかはっきり白黒できないところだからこそ、簡単に決めつけずに考えることが大切だと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
横山久美さんのその他の記事はこちらです。
コメント